4話中の後半、3話と4話は『ベルサイユのばら』で圧巻のラブロマンスの感動を日本中に贈ってくださった池田理代子先生らしい外国を舞台にした、一方が悩ましく焦がれる恋愛物語。
ですが、私が熱を込めて感想を綴りたいのは、1話と2話です。
日本国内を舞台にした日本人を登場人物とした物語。
池田先生はストーリー展開はもちろんのこと、人物の気質や心の描写をナレーション的な説明文ではなく、作中の人物の言動で表現することが抜群だと思うのですが、この作品は冒頭からじわじわと違和感を読者に感じさせ、次第に推測が的を射てる確信へ向かい、やがて種明かしと共に合点がいくという、スリリングさを味わえます。
随分、昔の作品だと思うのですが、不思議なことに、現在こそが、ここに描かれている『とみ子』のような人物に心当たりがあるというか・・・いわば、心の闇を癒やさないまま、体と年齢だけが時を重ねたような人をイメージしやすいようにも思いました。
虚言癖と一言では片付けられない、本人は大真面目に信じて、見ている世界があると少しゾッとしたのが本音ですが、少し人間を知る手がかりになる漫画だと思いました。