サトラレが生きていくことは難しいです。サトラレであることを本人が知ってしまえば思考を周囲に知られる苦痛から精神が崩壊します。そのため日本ではサトラレ対策委員会が彼らを24時間監視しています。(もちろん彼らに気づかれないように)。
サトラレの家族にも試練が待ち受けています。例えばサトラレと性行為を行えばサトラレの心の中の言葉が周囲数十メートルまたは数キロメートル四方の人たちに聞こえてしまいます。
2人のサトラレが遭遇すると最高レベルの危険が発生します。互いに相手の心を読めてしまうから2人双方が「こいつはサトラレだ!」と気づきます。その気づきが相手に伝わるので「この人だけでなく自分もサトラレだ!」と両者は気づいてしまうのです。
サトラレであることに気づいた人の多くは絶望のあまり自殺を試みるので、サトラレ対策委員会の仕事も大変です。
少し話が脱線しますが、嘘をつけないというサトラレの属性を知って私は、最近話題の中国のSF「三体」を連想しました。地球人と比べて遥かに高度の知性を発達させた三体人は「考える」ことと「話す」ことが同一の行為になります。言い換えると嘘をついたり人を騙すことができないのです。他方、嘘をつく能力を有する地球の人類は、地球侵略を狙って全人類の活動を探知している三体人から軍事作戦を隠すために4人の「面壁者」を選び、三体人を倒す作戦を彼らの脳の中に秘匿します。
話をサトラレに戻します。「嘘も方便」なんて言いますが、他者を騙すことが人類の文明と高度の社会を支えてきたんだな、と気づかされました。私は読まず嫌いで長くこの「サトラレ」を読まずに生きてきましたが、非常に考えさせられる作品だと思いました。唯一の難点は、登場人物の顔が似ているパターンが多いので若干ストーリーを追うのに苦労することです。