他の方のレビューにあるように『見送りのあとで』は身内を亡くした経験を思い出し沁みます。最後の『柿の木のある風景』は、特に昭和に育った世代の郷愁を呼びます。「大人も子供も今日より明日の方が良くなると信じた時代」に幾多の家族が、何かを失い、何かを得ながら懸命に生きた姿が、自分の家族たちの姿に重なる筈…懐かしく愛しい生活の描き方が素晴らしい。子供の頃、近所のどこかの家の庭の柿(でも枇杷でも柘榴でも)を近隣の幼馴染たちとみんなで取って食べたことのある人はもちろん、そうでない方もこんな日々の営みがあったことをぜひ読んでほしいです。