青年漫画の皮を被った少年漫画という印象。警察の特殊部隊所属の主人公を描く、所謂「お仕事漫画」だ。
しかしそれらに求められるであろうリアリティ・説得力・臨場感があまりにも欠如している。特に人物の内面描写が酷い。
犯人はほとんど心神喪失状態・人の心0の狂人として描かれ、現実の類似事件の犯人像とは似ても似つかない。自らの保身すら考えず、凶悪さだけを際立たせるだけの役。露骨なまでの「悪役」である。
主人公サイドのキャラクターは、個性は立っていて初見でもまず混同することはない。がしかし、あまりに漫画的(厨二病設定とも言い換えられるか…)で、尚且つ内面描写に共感力や説得力を持たせられていないため、表面的で薄っぺらに感じてしまう。さらに主人公が幼稚なヒロイズムと独善に支えられた感情的な行動を取るので感情移入し辛いし、正直読んでいて不愉快である。しかも彼の判断が間違っていたとしても主人公補正ですんなり解決してしまう。さらにさらにストーリー展開も劇的すぎてリアリティを削ぐ。ご都合展開の塊だ。事件内容の描写も「刺激的」なことを重視して注意を引こうとする客寄せパンダ的なものに感じる。
以上、お仕事漫画を読みたい、重厚なヒューマンドラマを読みたい、リアリティ溢れる特殊部隊の現場を見たい、人にはこれ以上ない程に不適当な一作である。