「後味の悪い話」「残酷な話」といわれる漫画で、ずっと読むのを躊躇っていましたが、読んで正解でした。たしかに理不尽でむごい話なのですが、そんななかにも、荒れ果てた土地に思いがけず咲く花を見るような、人間の善の部分が描かれています。人間は善良で美しいだけの存在には決してなれませんが、極悪非道でモラルもタブーも完全に無視した、卑しい欲求のみに生きることもまた不可能なのだと思わされます。そこに人間のいとおしさと、生きることの困難と幸福がある。絵の美しさとあわせ、そういう物語として、私はこの漫画を素晴らしいと思います。