面白い。物語は「現実」世界と仏教的な「識」世界を行き来しながら紡がれる。「現実」世界においてはタイトル通り五感+意識によって自身の心が形作られるため、どうしても自己以外の存在によって心が規定される。しかし本来の識世界には制約が無い。だからこそ解放された自我は、自分にとっても他人にとっても非常に危険なものとなりうる…。淡々と繰り返される「現実」から一枚隔てたところに、自由と自己崩壊の同居する世界が有り、解き明かされることの無い何者たちかが遊弋している描写はとても楽しく、意外な形で閉められたラストまでさまざまな面白味を感じることが出来た。