表紙のおさげの少女に惹かれ1話目を読み、「まだあげ初めし前髪の〜」と島崎藤村の初恋を思い浮かべ、逢瀬の設定に思わずときめいてしまった。青く初々しいものから色香漂うのものなど、6つの性愛のお話。一生に一度だけの鮮烈な経験を自分達だけの密やかな記憶として始める者、継続する者、追憶する者の姿が、時代設定と絵のタッチも相まって、より素朴でより官能的に感じられます。箸休め的な小噺は天衣無縫な奥様も素敵ですが、翻弄される薬屋店主に同情しつつも笑ってしまいました。いつかの自分と出会えるかもしれない、ノスタルジアが詰まった短編集。