ジト目風でパンツの見えそうな幼女、自分から踏みつけられに行く男性。こんな表紙の作品を読みたいと思う人はそう多くは無いだろう。…だからこそ、1巻まるごと試読させてもらえた僥倖に感謝したい。世界観が理解できる所まで読むことが出来れば、この作品が非常に秀逸なコンセプトに則り成り立っている事が分かる。序盤の数ページだけでは凡庸に見えた設定のその奥行、登場人物たちがままならない現実と格闘を重ねたその跡。そうしたものが見え始めることによって初めて「非凡な平凡」がここに描出されているのだと分かるようになってくるからだ。加えて、こうした作品構造の上では、二度と帰ることの無い時間の流れの中において、或いはありがちな、或いは下らない(例えば表紙のような)「日常」がどれだけ貴重か…、好きな瞬間に留まらせてくれない非人間的な現実に対して人間の意識はどの様に存在すれば良いのか…、思い致さなければならないと強烈に思えてくる。その意味では、前巻の時点ですでに「恐るべき一冊」以外の言葉が出て来ない。シンプルに娯楽漫画として評価するならそこまで秀作とは言えないが、SF作品としてであれば、シェクリイの名作[静かなる水のほとり]を彷彿とさせる…と評しても大きく間違うことは無いだろう。作者さんには、とにかく賛辞を捧げたい。