齢80になるベテラン作家のまり子は四世代同居の物理的にも心理的にも肩身が狭い家で孤立していたが、とある出来事がきっかけで一念発起の家出。
心機一転ネカフェに間借りし新境地を開拓する作品の執筆に精魂を注ぎこむのだが……
とあらすじを要約すると悲惨に聞こえますが全然そんなことありません。
認知症や高齢者の孤立など社会問題も織り込みつつ、シリアスに偏りすぎないコミカルかつライトな作風で、立派なエンターテイメントに昇華してます。
とにかくまり子さんがいいキャラしてます、魅力的なおばあちゃんです。
明るく前向きでおっとり天然、良い意味で全く世間ズレしてない。
上品な物腰で語り口も柔らかく、若者が将来はこうありたいと願うような、ある意味理想のおばあちゃん。
かと思いきや一目で編集者の欺瞞を見抜き、「私は駄作を書いてしまったんですね」とその眼前で原稿を破り捨てる作家の矜持は健在。
自分の著書を読破した読者の存在に感涙するなど、ストイックな創作姿勢に好感持てます。
そんなパワフルな老女がボケ防止に始めたネトゲにはまった同年代の友人や、SNSに手広く通じたイマドキ学生を巻きこんでクリエイター業界に旋風を巻き起こしていく(予定)なのが痛快。
柔和で温厚に見え、その裏に未だ衰え知らぬ創作への情熱を滾らせたまり子さんが、世代差や年齢差を飛び越えて精力的に奮闘する姿に思わず感情移入して応援したくなる。
まり子さんの孫嫁がこれまたいい味をだしている。