「コンピュータ通信」が「インターネット」へ移行し始めた1993年。メタバースを巡る事件へ、ワケ有って首を突っ込んだ主人公の"闘い"を描いた作品。コンピュータ・ネットワークを巡る頭脳戦が中心ながら、それ自体はおよそ定番の範囲内。しかし、その闘いの周辺描写…例えば、ネットワーク化されたコンピュータたちの、ミニマムで意地悪い"反乱"。小難しい技術論の省略の仕方など…が舌を巻くほど上手いため、IT環境が大きく変化した現代でもほとんど陳腐化を感じない。おまけにハイテクが苦手な人でも読み易いとくれば、地味な名作とか、通好みな作品と評価して間違いないと納得できる。お陰で、今ごろになってドラマ化されても不思議じゃないと思えるほど楽しんで読むことが出来た。