衝撃作という見出しだが内容はそれほどでもない。
何処とも知れない森の洋館に迷い込んだ少年が、カロンという不思議な少女に出会って探検する話なのだが、茂木清香の別作品を読んでいれば大体テイストがわかるはず。
良くも悪くもテンプレ通りの茂木清香作品。
グロ描写もそこそこあるが、デフォルメされたファンシーな絵柄が忌避感や嫌悪感を中和する。むしろ登場人物の精神構造がグロテスク。
序盤で明らかになるのだが、この少年の正体は実は殺人鬼。しかし彼が殺人鬼になった理由は明かされない。
両親の虐待、歪んだ躾が原因なのは回想シーンでわかるのだが、シリアルキラーになるほど酷かったかと言われると……まあ個人の資質も関係するのかもしれないが。
同様にカロンの身の上話も中盤で語られるが、こちらの方がエグさが上。その後の皮肉な結末も含めて。
面白く読めたのだが、コレまでの茂木作品と同じく風呂敷は畳みきれてない。
現実のカロンと殺人鬼が知り合った経緯とか、ああいう世界観と設定にするなら最低限合理的な説明が欲しかったのに端折られているからご都合主義に思える。
しかも後半で登場人物が死ぬのだが、一種の仮想現実であるあの世界で死ぬって……え、もとから地獄で死人じゃないか??
仮想現実の死がリアルにフィードバックするなんてどこにも書いてないし、作者の中でだけ完結してストーリーを進めている。
結末はメリーバッドエンドと言おうか、決して後味よくはない。
極悪人がさばかれずある意味幸せになって終わるので、そういう胸糞さが受け入れられる人向け。