まるで富士山のような巨大な独自性をもって屹立している作品。読み始めた時に抱く印象が、読み進めるたびに幾段にも成長しながら変化することで、混乱の向こうに存在する"事象の地平線"(作品世界の中で、物語が扱う範囲の限界)がようやく見えて来る。そして…例えば人類絶滅も、友人とのケンカも同様なフラットさで描かれる様式のため、物語におけるそれぞれの要素の重要さが読者には容易に伝わらない。故に全ての道筋が結末へ、その向こう側へと至るかのような豊かな存在感を保って伸びて見える…このあたりのバランスのとり方は本当に奇跡としか思えない。正直、先に読んだ[DBP]が本作のあまり上手くない焼き直しにしか見えなくなるほど、これは見事な作品だったと思う。