その子犬は、生まれる時産道で、へその緒が切れ呼吸を始めるまで30分かかった。
「残念ですがこの子は育たないと思います」
獣医にそう言われた石川夫妻は
「この子頑張ってる
だから生きてるかぎり私が世話をするわ」
「そうだね最善を尽くそう」
そう話してその犬を世話すると決めた。
「おとうさん、この子鳴かないね。鳴けないのかしら。一度も声を聞かないわ」
子犬は立っても、バランスを保つことができない。
石川さんはスポンジと布で頭を守るヘッドギアを作った。
はじめは3歩、翌日は7歩。
何度転んでも
子犬は前に進もうとした。
「この子倒れても倒れても起き上がろうとしている」
「起き上がりこぼしのコボちゃんだ」
名前が決まった「コボ」は、それから奇跡の犬となる・・・。
北海道ムツゴロウ王国で、30余年。
犬と人とが同居する楽園“百友坊”で、2000匹の犬たちと石川さんが見つめてきた命の物語を、短編の名手・奈知未佐子が温かく精緻なタッチで描き出す・・・
ブー、マロ、タブ、ミゾレ、ダーチャ、タロー、ベルク、ラーナ、シグレ、トカチ、そして奇跡の犬、コボ。
11匹の犬たちの物語。犬と人、出会いと別れの感動の実話。単行本化にあたって、石川利昭氏が綴ったそれぞれの犬の思い出エッセイも同時収録。実際の犬たちの写真なども多数収録。読み応えたっぷりのコミックスです。