大学生ライトノベル作家の元へある日一通の奇妙なメールが届く。
その日を境にして彼は自著の見立てともとれる連続殺人事件に巻き込まれていくのだが……
暗躍する謎の少年。胡散臭い刑事。
自らの作品を模倣するように次々起こる猟奇的な事件が「日常」を浸蝕していく……
フィクションに触発され犯罪に走るという言説は事実か?はたしてフィクションはそこまで影響力を持つのか?
フィクションの作り手及びその享受者にとって避けて通れない命題に斬新な切り口で挑んだ実験作にして意欲作。ライトノベルの見立て殺人を行う黒幕は、これを一種の実験と称している。
いわく、―「我々は創作が人間にもたらす影響を追究します」−
逆転の発想、認識の倒置。あくまで「追究」であって「追及」ではない。
事件が起こると犯人が偏愛していた漫画アニメゲームの影響が取り沙汰されるのは昨今の常だが、この犯人の動機は斜め上すぎる。
「本当かどうかわからないならわざと混ぜてみればいいじゃない?」
一巻はまだ序章にすぎず、犯人の正体はおぼろげにも掴めない。
しかし引き込む力は十分にある。
ライトノベルの愛読者はもちろん書き手志望者なら主人公の創作スタイルにシンパシーを抱くだろうし、問題提起にも興味を示すはず。
ブログやツイッター・携帯など、すっかり世の中に浸透したツールが頻繁に登場し、事件の進展の鍵を握るのも面白い仕掛け。