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『プロペラ天国』のレビュー

奇抜な作品設定の中にあって読者にはそれがどんな世界なのか、どんな物語なのかすらも十分に提示されないまま進んで行き、わからないままに魅了される…というのが富沢作品の一つのパターンだが、今作は物語として最終的には大凡の設定を開示しつつも、同時にそうしたある種の「眩惑的要素」が殊更に強調された作品であると感じた。 序盤の数話を見る限りは、『恋愛探偵組』結成を主導し、時には姉・小糸のピンチに駆け付ける妹・小鐘が本作の「主人公」として映るだろう。しかし、通信機越しに小糸の活躍をモニターしている彼女は、その実それらを覆うもう一つの世界を与り知ることは出来ない。 前半に一度、作中作である『恋愛探偵組白書』の一場面が夢オチ的な演出とともに挿入されるが、作中の出来事が『白書』を再現して進行されてきたシナリオであると判明するに至り、この演出はそれまで読み進めてきた読者にとって現実と虚構が逆転するかのようなうすら寒さを与えるだろう。 であれば、私達の手を離れ否応なく回転を始める物語(せかい)への困惑は、期せずしてカキワリの世界の裏側に触れてしまったあの少女の追体験ではないか。タイトルの示す『プロペラ天国』とは、もしかしたらこうして自分が立っていた世界の認識が揺らぎ崩れる瞬間の、不思議な浮遊感の事を謳っているのかもしれない。
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2021年6月23日
SF漫画の最高傑作のひとつ。 人類が自分が作り出した存在に支配されてしまったディストピアを描くが、その支配が人間たちには認識すらされてないという点が悲惨さを増す。 例えば本作では人類は記憶すらいじられて管理されてるわけで、自分たちの記憶がいじられてることすらわかってないからそのような圧政に挑むという発想すら出てこないわけで、そのような陰鬱な状況すらわからず、普通に生きていく。 その転機が一部の合成人間による反乱だが、これもあっけなく潰える。合成人間より劣る存在である人間は自分たちが支配されていることすらわかってないので種族が続く限り永遠に管理され続ける…ように見えたが、最後におそらく芽生えることもない小さな希望が見つかる、というお話。 人類は本当に普通に生きているのでディストピア的に見えないが、実際は合成人間たちがその気になれば殺害も記憶の改竄も簡単にできる始末で、合成人間側だって人類の不出来さを自分たちの支配の大義にするが実際は人類抜きでは存在しえないいびつな存在であるという地獄絵図はさすが富沢としか。 しかも人類も合成人間もそのような地獄の無限ループに落ちたのは自業自得ですからね。
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2019年5月12日
普通の人間と合成人間がいる世界 、とあらすじ書いたところでな不思議すぎる作品。 プレイステーション1(90s)の空気感をひしひし感じる。 よく分からない設定の中にどうかしてる世界と思想があって 独特の時間感覚が流れてる感じ。 郷愁っちゃ郷愁。でも面白いかと言えば何とも言えない~。
2019年3月8日
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