『チ。―地球の運動について―』のレビュー
地動説。現代人なら誰もが知ってる『真実』を『偽り』だとする時代に、命がけでその『真実』を語り継いだ人達の話である。
テンポのよさと時折入れられるシリアスな笑い、科学や歴史のみならず、経済、文化さまざまな観点からも話がつくられており、サクサク読んでいける。
どのキャラクターもそれぞれ魅力があり、死んでしまうのが心底口惜しいのだが、一人、重要キャラクターをあげるとするなら第一部の主人公ともいうべきラファウではないだろうか。
彼が最終盤ある形で再登場する。この点に関して解釈は色々あるだろう。そもそも、それまではずっと舞台はP国とされていたのが、最終盤では舞台が明確にポルトガルとされているのが一つ鍵ではある。ただそれ以上に、彼の存在は我々に多くのことを自己吟味させるはずである。我々の心のなかにもまた、子供のラファウ、青年のラファウは様々な形で存在しているのだから。
「〜の中にコペルニクスという名の青年がいた」
読後、この一文に行き着くまでに流された多くの血と知性に思いを馳せる。間違いなく日本漫画史に残る傑作の一つ。
ネタバレを含みます
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2023年1月3日
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