平*****さんのレビュー
托卵
人はなぜ差別せずにはいられないんでしょうね… 己と異なる者は忌むべき者か。蔑み貶め得るものは何か。息子を集団で撲殺できる狂気は何処からやって来たのか。人々の猜疑心が憎悪や恐怖に変わった時、私は何処に立っているだろうか。過去何千年と繰り返され、まさに今現在も、そしてこれからも起こり続けるであろう行為をひさうちみちお流に描いた、ジワジワと考える事を迫られる「異物を排除」する〝とある国々の物語〟。信仰の危うさ残忍さ、人間の賢明さ愚かしさを過剰な描写やドラマティックな展開に頼らず、淡々と作者らしい技法で印象深く見せ、ある時は傍観する側、ある時は排除される側、ある時は排除する側の感覚になっていく。主人公はいない、全ては読み手に委ねられている自分を顧みるよすがとなる一冊。
2021年8月26日
167
ミッドナイト・ウォーク
大通りの真ん中を真っ直ぐ歩きたい、側溝に追いやられても前進したい、ひっそりと一人細い道を行く、そんな男たちの汗と鼻水と涙の抵抗が熱い。平穏の為に自身を偽ったり、孤独を選んで適当なスリルを夢みていても「生きがい」や「誰かの為に」を欲する時がやって来る。誰しもが「生」を要求してなんだか苦しく、この作者の根底にロックンロールがあることがひしひしと伝わってくる。最後の「2人の手はつながったまま」では毛色が変わって力が抜けて、昔の食器用洗剤CMの手繋ぎ老夫婦を思い出し「実はあのじじばばも?」と想像して笑わされたうえに和まされた。どの話も良作だと思うけれど、2話目「夜半」だけでも充分☆5。
2021年7月28日
230
茂木清香初期作品集
ちょっと悪い機嫌がちょっとは良くなるかもしれないコメディ。運良く周波が合致すれば噴飯も可能、かも。2話目の少年漫画的アホ設定「join us!酸化しようぜ」は。
中高生の頃に出会っていれば、化学の成績が多少は良くなったのではと思うと、ちょっと悔しい。
1話目はブラックジョーク?生駒さんという一家の「ザ・日常」を、緻密さを描き分け3つの異なるコマ割りパターンで表現されているのですが、作者に感情の振子をうっかり操られてしまいます。40ページの間に何か思ったはずなのに、最終頁で「え?お父さんそんなこと出来んの?」と頭の中はお父さんの事でいっぱいに。お父さんの家の外での日常が知りたいわー。
2021年7月5日
73
苦悩!化け猫おはし 小話集
化け猫=カワイイとな。油も舐めない、お姫様を取り殺してお家も祟らない。
化け猫バレを警戒しつつもちょい漏れしているおはしが愛らしい。
そっとしておいてくれている家族のおはし愛も良い感じ。
でも、たまに子供達の方にちょっと、うん、ちょっとなんだけど何故か
恐怖を感じる。
2021年6月22日
66
レビューフィルタ