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t*****さんのレビュー

少女の繭
1.この作品を知ったきっかけは? 以前、怖い漫画を探していて『母と姉』を読んだので、同じ作者の作品を読もうと思いました。  2.この作品も怖いのか? 月並みですが「女は怖い」と感じました。女性の美醜に絡めた恐怖のモチーフは楳図かずお先生が『おろち』や『恐怖』の中で多用されていましたが、この作品では特に際立っておどろおどろしいものものは出てこず、比較的淡々としていて、乾いた恐怖感が強いように感じました。 3.ブスという言葉の重み 第1話の表題「ブス」って、有毒性の強いトリカブトの根を意味するのだそうです。そうだとすると、岩手県の志波三山の一角に毒ヶ森という山がありますが、宮沢賢治さんが「ぶすがもり」と呼んでいたのも頷けるような気がします。主役二人の心に毒があったのなら、二人とも「ブス」だったんでしょうか?  4.目が合図 作中のハイライトシーンで、主人公の目の描き方に大きな変化が表れ、「ここから何か始まるよ」とワクワクさせてくれます。この作者は『母と姉』のなかで、鼻を描かないことによって恐怖を増幅していたと思うのですが、この作品ではやはり心のありようを映し出す「目」を活用していたのではないでしょうか? 5.心理描写の深み 愛情を振り向ける相手が女性同士である点にあまり疑問を持たせない展開の中で、愛情の根源に「優越感」があったり、ストーカーまがいの「押し付け感」があったり、更には憎しみと併存していたりしますが、これらの心のありようを実に深く、でもサラっと描いているのが、この作品の魅力ではないでしょうか?
2023年8月15日
キーチVS
1.この漫画を読むことになったきっかけは? 一部嫌悪感も持ちながらでも前作を最後まで読みきったので、続編も読みたくなりました。  2.前作とは違った印象が? 主人公の顔立ちがとても見やすいというか、どちらかというとイケメンになりました。幼少の頃の凶相がどこかへ吹っ飛びましたが、少し寂しい気持ちになるのは私だけでしょうか?更に、コマ割りがとてもスムーズになり、読み手が見たいと思うシーンを大きく描いてくれるようになりました。こうなると、読むスピードがとても速くなります。  3.この作品の見どころは? 大きくは2つ。1つ目は主人公たちが大事件を起こす展開の部分と、もう1つはやはり衝撃のラストだと思います。私としては大事件の内容そのものよりも、主人公がその大事件に関わる際に、関係者たちを説得する場面の迫力がすごいと感じました。さほどしゃべりが得意ではない主人公が、理屈で、自らの命を張って、更に「情」迄駆使して説得していく姿勢に読み手としても取り込まれていきます。  4.読み手にドスが突きつけられている? 作中で主人公たちがメッセージを送る対象者である「国民」は、この作品の読み手そのものです。「お前は、正しくないとわかっていても、見て見ぬふりをするのか?」って、この主人公から面と向かって言われたら、どう答えれば良いでしょうか?私なんぞは、答えに窮してしまうでしょう。活劇として割り切って、客観的にこの作品を読めば「痛快、爽快」となるかもしれませんが、読めば読むほど自分にドスが突きつけられていることを自覚すると、この作品に重みを感じざるを得ません。  5.パートナーに同情しますか? 主人公にとって最強のパートナーが前作から出てきます。いつも主人公に振り回されて、挙句の果てに・・・となるものですから、「かわいそうに」と同情したくなります。しかし、こんなひどい目に合っているのに、比較的穏やかでさっぱりした表情をしています。常に「まだ、次がある」という想いを秘めているように見えるので、けして彼は後悔していないのではないでしょうか?  6.で結局面白いといえるのか? 面白いのを通り越して、「傑作」だと思います。これほど読んでいて、共感と不快感が同時に沸き起こってくる作品はないと思うわけです。突きつけられたドスにより、読者が自らの「良心」と語り合うのに適した作品です。
2021年8月29日
キーチ!!
1.この漫画を読むことになったきっかけは? 表紙絵で主人公が不思議なポーズを取っていることと、既に寄せられていたレビューの中で「何とか最後まで読んでみて下さい」とあることから、興味を持ちました。  2.読み始めの第一印象は? 最悪でした。主人公の顔が、映画『グレムリン』におけるギズモの変身後の姿を彷彿させる凶相であり、セリフの意味がよくわからず、コマ割りがわかりづらいというか肝心の場面が遠景になっていて「もっとカメラを寄せて!」と言いたくなることから、なかなか感情移入できなくて、読むスピードが上がりませんでした。  3.どうやって最悪状態から脱したのか? 主人公の幼少期における1番目の事件の後から、主人公の黒目が少しはっきりしだしました。小学生になると、幼少期より顔の穏やかさが増し、見た目の嫌悪感が薄れました。そして、後半のプロジェクトが始動すると、とてもスピード感が増して、引き込まれていきました。  4.それでも嫌悪感が残る人がおられるかも 読み手の方の中で、ご自身やご自身の子・孫が、主人公みたいな子に暴力をふるわれて歯を折る(或いは怪我をする)等の体験をなさった方は、主人公の幼少期の暴力シーンに嫌悪感を感じられるかもしれません。これはもう、理屈ではありません。どんなに、主人公が主人公の視点・価値観で「この子は悪いことをした、だから殴った」ということがわかったとしても、生理的に納得できないと思います。従って、こういった方に無理にこの作品に最後まで付き合わせるのは酷かと感じました。私は主人公が小学生になってからの暴力シーンにおいても、嫌悪感をぬぐい切れませんでしたが、何とか小学校編の最後まで読んでみました。 5.この作品の良いところは? 2つのメッセージが示されているところかと思います。1つ目は、主人公のような「〇〇症ではないか?」と疑われる子にも何らかの才能があり、これを活かせば「生き抜く力」が芽生えるという点です。もう1つは、「武闘派と理知派」や「子供と大人」が同じ目的に向かってタッグを組めば大きな力が生まれるという点でした。  6.で結局面白いといえるのか? 大きな見方をすれば「勧善懲悪」なので、「スカっ」と感はありますし、続編も読みたくなりましたが、単純に面白いと言い切れないと感じました。正に賛否両論を生む作品ですが、そこが良いのではないかと思います。
2021年8月24日
子連れ狼
1.読み始めるべきか迷っておられる方の為に  何しろ403話までありますので、読み始めること自体をためらう方もおられるかと思います。まずは、33話迄お読みになりませんか?そうすれば、主人公の凄まじい迄のエネルギーの源をご理解いただけるかと思います。やはり「目的をもって突き進む人は強いなぁ」と得心させられるわけです。でも、本当は最後までお読みいただきたいのです。34話以降も見所が満載ですよ。 2.この独特のタッチはどこから来るのか?  この執筆者の描く「線」は独特だと思いませんか?何とGペンではなく、筆描きなのだそうです。画風も、白土三平先生の『カムイ伝』で作画担当をしていた経験がにじみ出ているような気がします。  3.登場人物の魅力とは? 主人公は目的完遂に向けての超人で、思考もぶれず、腕も立つということで魅力度たっぷりです。「しとしとぴっちゃん」で有名な大五郎には、「死生眼」というキーワードが付いて回ります。敵役の方々も憎々しげで大変生命力に溢れているのですが、物語後半に出て来る「大いなる俗物」ともいえる登場人物が目を引きます。もう憎たらしさでは、作中ナンバーワンではないでしょうか?  4.見所は? 敵方との確執の発端となった事件、大五郎と修羅場を共にすることを決めたきっかけ、迫力ある数々の死闘、敵である烈堂との不思議な人間関係、最終話におけるあまりにも有名なあのシーンと数々の見所がありますが、一押しは、主人公が大五郎に語りかける「最後の言葉」のシーンかと思います。命ほとばしる言葉の1つ1つが読み手の心に突き刺さってくると思いませんか?  5.突っ込み所も 主人公が正々堂々と幕府の中枢といえる場所に入り込んでいったり、最後の一戦で見物客が集まってきたりと、「ん?」とも思えるところがありますが、一番の極めつけは同業者である山田浅右衛門との格闘でしょう。同じ原作・執筆コンビで、この作品と同じ時期に『首斬り朝』という作品があり、そちらでも三代目浅右衛門吉継が登場するのですが、顔が違うわけです。と、まぁ、突っ込み所も多々ありますが、娯楽作品として楽しめばよいのではないでしょうか?  6.セリフの固さについて  時代劇という事もあり、セリフに固さを感じる方がいらっしゃるかもしれません。難しい用語が出て来るのですが、慣れて来ると大体の意味を読み取れるような気がしました。
2021年8月22日
死役所
1.この作品との出会い 特にドラマでも見ていませんでしたので、正直な所「無料ページが多かったから」なのです。  2.最初に目についたのは? 自分の無知を晒すようですが、「作者の名前をどこで区切って読むのだろう?」ということでした。シンガーソングライターの「さだまさし」さんの名前を初めて見た時も同じことを感じました。  3.あのV字口に目が行きませんか? 主人公の顔を見るとV字口がとても強調されているように見えます。人相学では「口角の上がっている人は、他人への想いやりの強い人」なのだそうですが、主人公は生前における自らの壮絶な経験を顔に出さず、あえてこういう顔付きをするようにしているのではないかという事が段々とわかってきます。  4. 不思議な世界観 この物語に出て来る職員の方の名前には、「シ」を中心としたカタカナが必ず入っています。更に、役所としての独自の仕組みがあるようですが、各課をたらい回しにされるのは、現実の世界と共通点があるような気がします。この不思議な世界をよく造り上げたと思います。  5.多彩な登場人物 この作者のタッチについては、読み手によって好みが分かれるかもしれません。私は、各エピソードで出て来る方々の顔、風貌、人生背景をしっかりと描き分ける画力は素晴らしいと思いますし、エピソード末尾は人生アルバム(昔だったら走馬灯)で締めるといった構成はよく練られていると感じました。  6.肝心の中身は? 1つ目の見どころは、色々な人間の死に様が描かれていて、中には目を覆いたくなるような凄惨なものもあれば、自業自得と感じさせるようなものもあるという点です。ただ、一番多く描かれているのが「え?あんなことで自分は死んじゃったの?」というケースで、「人とは、時としてこうも簡単に死んでしまうのだ」ということを思い知らされ、色々と考えさせられます。人、そして自分の死を見つめ直すには、とても良い作品ですね。もう1つの見どころは、主人公の凄絶な生前体験ですね。正に「理不尽」という言葉が浮かびます。「人は自分の力ではどうにも解決できない問題にぶつかったときに、解決策が何も浮かばなくても、その状況と向き合い続ける力が求められる」というメッセージの様にも感じられます。本当に、普段あまり考えもしないようなことを考えさせてくれる、この作品と作者に感謝です。
2021年8月21日
残夢
1.読みたくなった訳は? スキマオリジナルで多数のレビューがあるからということもありますが、何といっても主人公の吸引力ではないでしょうか?主人公のオーラ漂う愛らしさに、引き込まれたわけです。  2.主人公以外にもお気に入りが 読み進めると、主人公より美形と感じる女性キャラが出てまいります。主人公の顔のパーツ配置は確かに整っていて、更に鼻の先端(鼻突)と顎の先端を結んだライン(美容の世界でEラインというそうです)よりやや後方に唇があり、正に理想的です。でも、ワキの美形陣もけして負けていません、従って、好みは分かれるものの、読者の様々な美感ニーズを充たしてくれると感じました。  3.それ以外の登場人物は? お話の中盤に出て来るモンスターチックな女性キャラや、とても個性的といいますか「変な人!」といいたくなる男性キャラがどんどん出てきますので、飽きさせません。  4.肝心の中身はどうなのか? 主人公もそうですが、完全にイってしまっている敵キャラの方々が残虐なことを平然としでかしてくれますので、少々古い表現ですが「血湧き肉躍る」世界に連れて行ってくれます。但し、こういうどぎついのが苦手という方は要注意です。最大の見どころは、「何故主人公はこのような異常行為を繰り返すのか?Jという点にあると思います。同様の目的達成の為に、楳図かずお先生作『おろち』の主人公は「100年に一度のねむり」を取りましたが、本作の主人公は「何かを収集」しているようにも見えます。しかし、読み進んでいきますと、「もう理由はいいから、もっと暴れてほしい」と不謹慎な(?)応援をしたくなってくるので、不思議なものです。JOKER編になって、少し刺激が少なくなったと感じる方もおられるかもしれませんが、しっかりと見せ場が用意されていますのでご安心ください。  5.何で65話の後を読めないのか? 他のレビュアーの方もご指摘されていますが、この作品は65話で完結しません。「何で続きを読めるサイトが他であるのに、スキマでは読めないの?」と感じてしまうわけです。スキマファンとしては、首を長くして待つことになるでしょう。 いづれにしても、当レビュアーとしては近年の傑作の1つとして、ご一読をお勧めしたいと思います。
2021年8月19日
ゆりかべ
1.この作品に出合ったきっかけは? 恥ずかしながら「百合」で検索しましたら、出合うことができました。  2.何故『ゆりかべ』なのか? 実は純粋な百合ものを期待して読んだのですが、通常ではあり得ない方(?!)が主人公だったので、ぶったまげました。『ゲゲゲの鬼太郎』に出て来るぬりかべだって、『ど根性ガエル』のピョン吉だって手足があるのに、こちらの方にはないではありませんか。手足はなくても、「壁に耳あり、障子に目あり」という言葉があるくらいですから、壁に目や口まであったっていいではないかという発想ですね。「だから『ゆりかべ』だったんだ!」と納得してしまいました。 3.で結局面白いのか? すごく面白い、と思います。「かべ」の立場で、「ゆり」の方々を静かに見守ろうとするのですが、結局黙っていられなくて何かをしでかしてしまう、というパターンが繰り返されるのですが、これが実に新感覚で心地よいのです。読み進めると、ついつい夢中になって自らが「かべ」と一心同体になっているような気がしてきます。更に、登場してくる「ゆり」の方々が美形ぞろいで、納得感が増すわけです。  4.もっと読みたい 最後までお読みになると、誰もが「もっと話を続けられないのか?」と思われるのではないでしょうか?他の方のレビューにもありましたように、続編が期待されます。
2021年8月18日
ターゲット
1.読んだきっかけは? なんと、その昔、少年サンデーに連載されていた時代の読者でした。近年、単行本が復刻されてから全編を購読したのですが、スキマでは無料で読めるとは、なんて素敵なことでしょう。  2.この作者のタッチが気になりませんか? どことなく、さいとうたかを先生のタッチに似ているような気がするのですが、いかがでしょうか?この作者は、テレビアニメ化された『赤き血のイレブン』も執筆されていたのですね。よ~く見れば画風に共通点があるのかもしれませんが、つい最近まで気づきませんでした。  3.登場人物の魅力度は? 主人公は復讐のエネルギーに満ち溢れていますので、すんなりと感情移入することができると思います。そして、もう一人敵役がいまして、まさにテレビアニメ『あしたのジョー』の主題歌にある「憎いあんちくしょう」に相当します。この人が、本当にイヤミな物言いで、残酷なことを平然とやってのけるので、憎々しさが倍増します。従って、その分やがて来るであろう決定的な「その瞬間」が待ち遠しくなってくるわけです。  4.見どころは? かなりストレートで残虐なシーンが出て来るところかと思いますが、「そういうのは苦手」という方もおられるかもしれませんからご注意ください。しかし、そういうのがお好きな方にとっては、手に汗を握り、「えっ?これはどうなってしまうんだろう?」とワクワクさせられ、お話に没頭することができるかと思います。もう一つの見どころは、主人公の人間関係で謎解きに近い場面が出て来るところではないでしょうか?登場人物たちの登場理由にご注意ください。  5.エンディングにご不満が残るかも 「何で、最後の最後まで描き切ってくれないんだ?」という声も出そうなエンディングとなっています。つのだじろう先生の『虹をよぶ拳』でも最後の最後が描かれませんでしたが、「読者に送りたいメッセージは、ここまでに全部出し尽くした」という事なのかもしれません。 ご興味を持たれましたら、是非ご一読をお勧めします。
2021年8月17日
【連載】母と姉
1.この作品を知ったきっかけは? 確か怖い漫画を探していたら、行き当たりました。  2.何が怖いのか? 他のレビューで皆さんがご指摘されているように、生きている人間そのものの怖さですよね。心理的な圧迫感を感じさせる怖さだと思います。読み始めは、「何で漫画のタイトルが『母と姉』なんだろうか?」と漠然としているのですが、読み進めるとその意味が分かってきます。  3.怖さの源は顔の描き方にも この漫画の登場人物は鼻が描かれていない場合が多いのです。特に正面顔ではほぼ描かれていません。ところが、斜め顔や横顔になると、日本人として十人並み以上の鼻が描かれています。そういえば女能面の正面顔で、顔の角度や光の当たり方によって鼻が見えづらくなる場合があります。能面は色々な表情に見えることによって心理演出の一役を買っていると思うのですが、本作でも登場人物の心の奥に隠された何かを暗示する意味で、鼻が描かれないのでしょうか?更に、読み込んでいくと、鼻だけではなく、目が描かれていないコマがあったり、のっぺらぼうになっているコマもありますので、顔に表情を持たせない恐さをじっくりと味わえます。  4.この短さで良かったのか? 「もっと長くしてほしかった」という気もしないわけではないのですが、この「話として終わったんだかどうかが微妙」というところが良かったのではないでしょうか?「妹が姉とこの先距離を置いたとしても、この恐怖は果てしなく続くのではないか?」という不安感を醸し出す為に、この短さで終了させたのかもしれません。
2021年8月16日
なつこの百名山 百コ登ったどー
1.この作品を読もうと思ったのは? この作者の『イカロスの山』を読んだことがきっかけでした。 2.イカロスとタッチが違う? 『イカロスの山』では、主人公たちの悲しそうな目が印象的だったのですが、こちらの作品は丸型の顔でギャグマンガっぽいタッチとなり、「こっちのタッチの方がいいんじゃない?」なんて勝手に思ってしまいました。   3.ボリュームについて賛否両論の可能性が 1話あたりに数山分のエピソードを詰め込むので、「もっとじっくり紹介してほしい」というご意見が出て来る可能性があります。ですが、何しろ百名山ですから、ある程度スピーディに、メリハリをつけて紹介するしかなかったのではないでしょうか?その代わり、毎回、「登山あるある」的なエピソードとか、色々な方との出会いですとか、わが身に置き換えて考えさせてくれることが沢山出てきますので、飽きることがありません。  4.謎のG隊長 作者と一緒に登山してくれる「G隊長」なる人物が出て来ます。果たしてこの方は作者の旦那様なのか、登山経験が豊富で作者をサポートしてくれる方なのかよくわからないのですが、時折登場してとても印象的です。  5.最終話はやはりクライマックス 作者が一番苦手に感じていた最難関の山についてのエピソードですが、これはもう読んでいて手に汗を握ります。そして、「人はこういう時に絶対やってはいけないとわかっていることをやってしまうものだ」という教訓が心に響きます。  ということで、山好きの方はもちろん、そうでない方も楽しんでお読みいただけるのではないかと思います。
2021年8月15日
イカロスの山
1.この作品を知ったきっかけは?  「山の漫画が読みたい」と思って、探していましたら、この作品に出合いました。この作品に出合うまで、この作者の事を知りませんでした。「少年誌に作品を投稿する作家さんは、業界の掟で、女性でも男性名にする」なんていう話をまことしやかに聞いたことがありますが、ご多分に漏れずデビュー当時は男性名で、途中から女性名になさったそうです。  2.登場人物の顔立ちで気になる点が それは、「目」です。ヒロインが一番悲しそうな目に見えるのですが、主役の男性2人も悲しそうな目に見えるのです。これが作者の作風なのかもしれませんが、想像力をたくましくすると、「人はどんなに幸せそうに見えても、どこか悲しみを抱えているものだ」という考え方が織り込まれているのかもしれません。そういえば、改めて「悲しい」という字を見てみますと、「心が非らず」とも読めますし、結構怖い言葉なんですね。  3.この作品の見どころは? 一つ目は、ずばり未踏峰への挑戦ということで、「主役の男性2名が生きて山から帰ることができるか?できるとすれば、どうやって?」という点ですよね。山好きの方にはもう堪えられない内容です。もう1つは、主役男性がヒロインとの関係にどんな踏ん切りをつけるかという点です。これが「1人を殺せば5人が助かる。あなたはその1人を殺すべきか?」と問題提起をされるマイケル・サンデル教授が好んで提示されるような「究極の選択」となっているような気がするのです。こちらの点については、賛否両論が噴き出すことは間違いありません。私も同じ選択はできないだろうと思いますが、これからお読みになる方の中にも、この選択のあり方について反対どころか不快に感じる方がいらっしゃるかもしれません。しかし、作者はけして安易にこういう流れにしたのではなく、ご批判を覚悟の上でこういう結末にしたのではないかと思うのです。ギリシア神話で、もしもイカロスがぎりぎり命拾いして戻ってくることができたとしたら、価値判断の基準が変わってしまうかもしれません。そしてその後の人生において難問にぶつかったら、「一回死んだものと思えば」ということで下す判断が多くの方々を納得させるようなものになるとは限らないのかもしれません。といったように、のめり込めるところだけでなく突っ込みどころも満載の作品ですので、是非お勧めしたいと思います。
2021年8月14日
愛蔵版 同棲時代
1.この作品を読もうと思ったのは?  実はこの作品が連載され、ものすごく話題になり、ドラマ化された際の主題歌も大ヒットした当時は、あまり読もうとは思いませんでした。何故かというと、この作者の描く女性の顔立ちに、「業」というか、「女の怖さそのもの」を感じていたからなのではないかと思います。もっと単純に言えば、絵柄があまり好きではなかったのですね。ところが、あれから幾年月、散々時間が経ってみましたら、なぜか苦手感を感じなくなりましたので、昔の話題作を見てみようという事になりました。  2.登場人物の魅力度は? 同棲をする一組の男女にしっかりと焦点が当てられ、彼らの精神風景もしっかりと描かれているので、読み進むとこの二人に引き込まれていきます。最初は美男・美女という表面的なところに目が行きましたが、彼らの人間臭い面に視点が移っていくと、「この二人を見守りたい」と思うようになってくるので不思議なものです。そして、彼らに関わるワキの方々がとても個性的な方ばかりで、しっかりと主役達を翻弄したり、悩ませたりしてくれています。 3.この作品の見どころは? ヒロインの悩みが果たして「パートナーに本当に結婚する気があるのかわからない」という点のみに起因しているかどうかについて、読み手が色々な解釈を加えることができるという点だと思います。月並みには、「最初は結婚という形で相手を束縛したくないなんて言っていても、結局は結婚という形で安心したいんでしょ」という突っ込みを入れたくなるのですが、そんなに単純ではなさそうだという読み方ができるところが最大の見どころではないでしょうか?更に、この作者が「昭和の絵師」と言われることを納得できるような、シーン構成の描き方が見られる点かと思います。劇画の世界でこういう描き方を試そうとしているという意図や意欲が伝わってくるので、これを楽しむのも一興でしょう。  4.時代を感じさせる面も この作品が描かれた時代は、同棲と聞いただけでセンセーショナルなイメージがあったかと思いますが、今はそんなことはないでしょう。更に結婚に対しての価値観も多様化しました。でも、男女の機微は一筋縄ではいかないという点は今も変わらないと思います。主役の二人を見守るような気持ちで読み進めていただくのがお勧めです。
2021年8月12日
冗談新選組
1.こんな忠臣蔵があったのか? 実は、この作品の表題作ではなく、第4話から始まる「仁義なき忠臣蔵」を大変気に入っております。他の忠臣蔵の小説・漫画・ドラマとはまるで異なる解釈を1970年代に提示されたのは、とてもすごいことだと感じます。  2.どんな新解釈なのか? 「元禄時代に発生した江戸城松の廊下刃傷事件は本当に吉良さんのいじめが原因なのか?」とか、「赤穂浪士は正義の味方なのか?」という論点に対して、新解釈を示されたわけです。旧解釈というかほぼ通説に近い考え方では、仮名手本忠臣蔵というお芝居の内容をベースにして、「吉良がいじめたので悪い人」とか、「赤穂浪士は悪者をやっつけた忠臣なのであっぱれ」としているのですが、本当にそうだったのかという投げかけをされています。その後、本作と同様の投げかけをする作品が出てきて、3.11が発生した2011年には、「新・子連れ狼」の執筆をされた森秀樹先生が「ちから」という作品の中で、更なる謎解きをされています。  3.新解釈の他に見どころはあるのか? ありますあります。登場人物たちが、それぞれのお国言葉で話をしているのが、妙にリアルに感じます。この作者の作品では「ホモホモ7」が有名ですが、突然劇画モードに切り替わるギャグマンガが持ち味でした。本作では、ギャグ描写一辺倒となっていますが、この描写とお国言葉が大変マッチしていると感じるわけです。作品の最後の方で、吉良さんが三河弁で語る申し開きの内容と最終話で内蔵助さんの語る恐るべき本音の内容が、もうギャグマンガの域を出て説得性を帯びて聞こえます。  4.文章がいっぱい出てきて読みづらいと思われる方に この作品、漫画の下どころか丸々1頁取って作者の想いをつづった文章が出て来るので、最初は面食らいます。私は、最初漫画だけを読みました。それでも全然話は通じますし、サクサク読めてしまいます。そして後から、この文章を拾い読みでも構わないのでお読みになれば、何故作者がこういう作品を描こうと思ったかという意図がわかります。歴史の中には、後世の人が自分の利益につながるように都合よく書き換えている部分があるかもしれないという事を感じさせられた次第です。  私は、この作品をかつて有料購入したのですが、今では無料で読めるのですね。せっかくの機会ですから、少しでも多くの方にご堪能いただければと思います。
2021年6月17日
蔵六の奇病
1.一押しは「かわいい少女」 表題作「蔵六の奇病」は作者が作家生命を賭けて描き上げたこともあり( Amazonチャンネル・Channel恐怖『ホラー漫画劇場』で作者がおっしゃっていました)、まさに名作と言えますが、私の一押しは「かわいい少女」です。かつて、雑誌掲載時に一読して「これはすごい。楳図かずお先生とはまた違った持ち味の恐怖漫画家が出てきた」と唸った記憶があります。   2.「かわいい」とはどの程度可愛いのでしょうか? 最近の漫画で洗練された美少女を見慣れた読者からすると、「これのどこが可愛いの?」と思われるかもしれません。この少女に蓑帽子をかぶらせると、正に「雪ん子」に見えるのではないかと思うのです。そう、初代ウルトラマン第30話「まぼろしの雪山」(伝説怪獣ウーが登場)に出ていました。え?ご存じない?あるいは岩手県の酔仙酒造さんが販売している活性原酒「雪っこ」のラベルに描かれています。いづれにしても、寒村の素朴な赤ほっぺの少女ということで、擦れていそうにない純粋なイメージを「かわいい」と表現したのではないでしょうか?   3.この作品のどこが一押しなのでしょうか? ずばり、それは「目」ではないかと思うのです。この作品で最初に登場してくる写真家の目を見て、「何でこの人の黒目は、大きさも向きも左右でちぐはぐなんだろうか?」と思うわけです。これはもしかして、作者が登場人物の目に注目させるための布石なのかもしれないと思ってしまいます。その後出会う少女の黒目部分の大きいこと大きいこと。そして、この黒目の変化で恐怖が募っていくという描写が大変印象的です。作品の中で、猫が沢山出てきますので、くるくる変わる猫の目にひっかけてのアイデアかと思いました。  4.一押しなのは「目」だけでしょうか? いえいえ、劇中劇ならぬ作中作で写真家と読者を話の中に引き込み、これを落ちに使っていくというストーリー展開も見事だと思います。この作品には際立ってグロテスクなお化けや幽霊が出てくるわけではないのですが、人間は知らず知らずに植え付けられた洗脳や意外と身近なもので恐怖を感じることがあるという点を主題にしている点がとても魅力的です。   この作者の作品はかつてかなり買い漁りましたが、無料で読める時代になったのですね。せっかくの機会ですので、ご堪能いただければと思います。
2021年6月15日
チェンジ
1.一言で 絵柄の好き嫌いはあるかもしれませんが、これだけ「切なさ」や「利他の心」を味わえる作品はめったにありません。お読みになっていない方はご一読をお勧めします。 2.画力 私は「おれは直角」の頃から読み慣れていたせいか、特に絵柄を苦手とは感じませんでした。当初は、あの「ハート型の口」の描写が苦手だったのですが、この作者の持ち味として受け入れてしまうことができました。 3.登場人物の魅力度 主人公の可愛らしさとひたむきさが充分に魅力的といえますが、何といってもあの「死神おじさん」の存在が大きいと思います。この作品が連載されていた頃、たまたま見かけたことがありましたが、「このおじさんは何を騒いでいるのか?」とよく理解できないでいたのです。しかし、最初から読んでいきますと、この方の訴えかけていることが痛いほどに理解できました。そして、このおじさんのセリフで私も涙を流した次第です。 4.物語性 本作の表題を見て、「一体何と何をチェンジさせるのか?」と思うわけですが、この点についてのアイデアをよく作者が思いついたものだと感心させられます。この作者の他の作品で、ここまでのアイデアを単行本3巻分という短編に織り込み、そして命の尊さをここまで強烈に訴えかけた作品はないのではないでしょうか? 5.没入感 野球のシーンが多いのですが、「ここまでか?」「いやいやもっと頑張れ」とハラハラドキドキさせてくれます。その昔、山本おさむさんの「遥かなる甲子園」を読んだ時も野球の試合の展開にハラハラドキドキしましたが、この作品も負けていません。やはり、ひたむきであるということは、周りを巻き込むものなんですね。
2021年6月10日
ヒル
1.一言で チケット欲しさに読み始めたら、意外と面白くて、有料になるギリギリの4巻迄読み進みました。 2.画力 私の様に絵柄が苦手と感じる人もいらっしゃるのではないでしょうか?顔の描写で唇のあたりの描き方に独特なものを感じます。それが明らかになるのが、横顔の描写で、鼻の先端と顎の先を結んだ線(美容の世界でEラインというそうです)より唇が前に突き出ている描写が多く、最初は違和感を感じました。しかし、見慣れて来るものですね。日本人の顔の造形としては平均的なのかもしれないと考えると、かえってリアルに感じるようになりました。更に、格闘シーン等における躍動感は素晴らしいものがあると感じました。 3.登場人物の魅力度 主人公が際立って美形であるとか、特に優れた才能や体力を保持しているということはなく、いわゆる「普通っぽい女性」なのにあまり普通と言えない「ヒル」としての行動を起こしてしまうというギャップが魅力なのかもしれません。そして、主人公以外の方々がとてもかっ飛んでいる方ばかりで、見ていて飽きさせません。 5.没入感 絵柄が好きと言えなくても、「ヒル」という非日常的な世界の実情が紹介されていて、しかも登場人物の方々が暴れまくってくれますので、もうあっという間に読み進んでしまいます。(後日追記)第5巻は結局amazonのkindle unlimitedの無料期間に読みました。
2021年6月9日
侍やめます
1.一言で 「花坂紅子」を読了した後、同じ作者の作品が読みたくなり、読んでみましたが、こちらも一読して損のない作品です。 2.画力 斬り合い対決シーンの描写力は素晴らしいです。この作者は刃物の絡む描写が得意なのでしょうか?もちろん人情の機微を丁寧に描きだす画力も優れていると思います。 3.登場人物の魅力度 主人公が別にイケメンに描かれていなくてもよいのですが、たらこ唇を更に横に引き伸ばしたような口元は強烈です。これが、読み進むと段々と見慣れてきて、主人公の実直さや「侍をやめる」覚悟を決めるに至るまでの苦悩といった内面の方に視点が移り変わり、主人公の人柄に引き込まれて行きます。また、この作者の作品の特徴なのでしょうが、登場人物がみな生き生きと感じられます。 4.物語性 各回のお話が読み切り的に起承転結をなしているだけでなく、全体としても展開していくので、とても読みやすいです。出来ればもっとたくさんのエピソードが読みたかったという気もするのですが、最近の漫画があまりにも長編志向となることを考えると、これはこれで良かったのかもしれません。 5.没入感 「花坂紅子」と同じく、「次のページが待ち遠しい」と夢中になることができました。
2021年6月6日
花板虹子【完全版】
1.一言で この漫画が全巻無料という事で、有料サイトを退会してこのサイトに入ってきましたが、期待は裏切られませんでした。   2.画力 絵柄については好みが分かれると思いますが、調理シーンや対決シーンの迫真の描写力には唸らせられるものがあります。   3.登場人物の魅力度 主人公が美形モードと職人モードを切り分けるところが一番の見どころですが、美形モードになったときに一重瞼が強調されて見え、とても印象的です。登場人物がみな人間臭くて生き生きとしているのもよいですね。作者が登場人物それぞれに愛情を感じていることが伝わってくるようです。   4.物語性 各テーマの前半で後半の落ちや種明かしに使う伏線が張られているのが面白いです。「このシーンやエピソードはこの後どう使われることになるのだろう?」と考えさせてくれるわけです。   5.没入感 「次のページが待ち遠しい」と夢中になること請け合いです。
2021年6月5日
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