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h*****さんのレビュー

ドラゴン桜
この漫画はいつ描かれたものであったか。第一巻の初版は2003年であるから、なんとそろそろ20年前の物になるという代物である。そのせいか、今の受験生当人にはわかりにくい、もしくは意味がわからないであろう描写もある。冒頭の「あらら・・組合強いよこの学校」とか、「(受験が特に熾烈だった時代を指しての)受験戦争」とかである。 この作品が20年もの時に渡って読まれ続けるのは、(言っては悪いが)構成が素晴らしいであるとか絵に見るべきものがあるとかそういった理由ではないと少なくとも私は思う。端的に言えば、この作品に長寿を与えてきたのは変わらないように見える受験制度である。東大の受験は大きくは変更されていないし、この漫画の立っている前提は余り変わっていない様に見える。しかし、この漫画はあくまで20年前に描かれたものである、ということを意識して読まないと(特に現役受験生は)危ない読みに陥る。というのも、この漫画は受験体験談ではなく、自己啓発という軸を照らすために受験を利用しているという構造があるためである。この漫画に描かれているメソッドはほぼ現在に至るまでに特に予備校において導入され、あるものは定着してあるものは破棄されている。つまり、この漫画にはすでに受験の方法論について学ぶべき点は(特に現役受験生にとっては)ほぼないのである。さらに厳しく言えば、この漫画に残存しているのは自己啓発要素のみである。だが、受験というものがそれを現実へと約20年にも渡って紐づけていたのである。そのことを踏まえて「自己啓発の古典」として読むのは一興かもしれない。(今流行りのNOTEなどで人から金を搾取するメソッドがわかる) 一つ注釈をつけておくが、この(続編も含めた)漫画の自己啓発は「世界は平等じゃないんだ」などの論調を起点とする暗黒啓蒙と呼ばれるタイプに近い。詳細は省略するが、極右思想と親和性が高いこの啓発様式を受験という様式を通して若年層が内面化することは恐ろしいことである。 最後に、受験というものを題材とした漫画では、志名坂高次「受験の帝王」を推薦する。ここに載る受験論は今に至るまで有効であるし、昔の受験問題がいかに自由であったか(変なものであったか)、(変な言い方だが)浪人しがいのあるものであったかがうかがえる。
2021年5月22日
数学しかできない息子が早慶国立大学に合格した話。(分冊版)
「天才を産みたい」などの親の願望は枝葉末節に過ぎない。話の主題でもないし、導入においてこの種の過激な語りが(多くの場合後先考えることなく)挿入されることは日常茶飯事である。 しかし、内容に関して言及すれば、「佐藤ママ」から連綿と続く子育て物語の亜種以上の価値を持ち合わせることは難しいであろう。コミカル調であることは本書の個性であるかもしれないが、(受験を主題には据えていないが)「あたしンち」などの存在を考えれば残念ながら吹けば飛ぶようなものである。 ところで、このような話に出てくる「数学だけができる人間」はとても人生が生きにくいものであるように思う。数学の問題の解法はあるレベル以上の問題では「見える」ものなのであり、ここの子どものような人たちは日頃の努力によって「見る」力を獲得しているが、実はその力は彼ら以外の人間も徐々に獲得していくものなのである。ここでは小四で微積分を解いているわりに、大学受験では次第に回りに追いつかれつつある様子が察することができるので薄ら寒い。 次第に「凡人」となっていくことには気づかない方がよいものである。ただ、この子どもは恐らく(特に物事の枝葉末節にこだわるところが)研究者には向いているのでアカデミアで暮らしていくのであろう。他人は経験する必要のない「凡人」を自覚するという体験を天才の中の天才以外の「天才」はしなければならないのが苦難となるだろうが(それをこの主人公がしないに越したことはないが、世界を視野に入れると9割方すると考えるのが現実的であろう)。 いずれにせよ、子どもは人間というだけで尊重されていてほしいものである。
ネタバレを含みます
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2021年5月17日
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