最初はモダン着物着た文学少女?が東京(主に谷根千あたり?)の美味しいものを手土産にうんちく語る、と言う設定の衒学趣味が鼻につくかな〜?と思いながら読んだのですが、出てくる食べ物がどれも大変美味しそうな上、さらっと描かれた短い話の中にドラマを感じさせて、そんな捻くれた感想はどこかへ消えていました。
正岡子規の話は、ビールでナッツを流し込む晴れた野球場から見える青空と、子規が病床から見上げた青空が重なるようで、喜びと侘しさがないませになったようななんとも言えない気持ちが胸にきました。ガツンとくる話じゃないけど、なんとなく余韻が残る、そして子規が病床で死の直前まで執筆し続けた『病牀六尺』を読みたくなる…そんな作品です。