前の人のレビューでこの漫画は「芸術だ」って評価してたけど、
取っ付きにくい難解なアート嗜好の所謂青林堂系とは一線を画してると思います、警察機構やLGBT界隈の描き方のリアリティは綿密な取材の成果だろうし、その成果の土台が一見奇妙な絵柄や人物描写に揺らぐ事の無いエンタメ性を与えているんだと。とはいえ不思議な作風なのは確かです、各キャラクターの個性が雪の結晶のように拡大し枝分かれし重層にも折り重なり増殖し、それが止んだ景色を俯瞰で見れば澄み切った静謐で真っ白な雪景色になっている、そんな感性だけでは描けない職人的な作家性をシュールな世界観に落とし込んでいる、高次元の二面性を軽々と超えられる人を「芸術家」というなら、やはりこの漫画は「芸術」と呼ぶに相応しい作品なのかもしれない。個人的にはこの時点の作者は「未来世紀ブラジル」や「12モンキーズ」の頃のギリアムに匹敵する才能の持ち主だと言い切ることに躊躇いはありません。マモラ先生の作品は初めて読みましたが、こういう時期に素晴らしい才能を発見出来たのは嬉しい限りです。このサイトにもマモラ作品は多いので当分は退屈せずに済むので本当にありがたい。