大通りの真ん中を真っ直ぐ歩きたい、側溝に追いやられても前進したい、ひっそりと一人細い道を行く、そんな男たちの汗と鼻水と涙の抵抗が熱い。平穏の為に自身を偽ったり、孤独を選んで適当なスリルを夢みていても「生きがい」や「誰かの為に」を欲する時がやって来る。誰しもが「生」を要求してなんだか苦しく、この作者の根底にロックンロールがあることがひしひしと伝わってくる。最後の「2人の手はつながったまま」では毛色が変わって力が抜けて、昔の食器用洗剤CMの手繋ぎ老夫婦を思い出し「実はあのじじばばも?」と想像して笑わされたうえに和まされた。どの話も良作だと思うけれど、2話目「夜半」だけでも充分☆5。