正直なところ、著者の世界は今もって理解することができない。ただこの作品については、人間の「性」への執着を少しも茶化していない。それどころか、歴史絵巻のフォーマットへの物語の馴染ませ方も巧みで、以前に読んだ悪ふざけ色の強い3冊どれとも表面上は全く違う印象を得ることが出来た。何れにしろ読んでしばらく考えたことで、一皮むけば将に動物的である人間を嘲笑い、同時に将に動物的である人間を愛着の籠った目で見つめる。そのうえで人間の言動の積み重ねを再現し、同調する事。それが著者の目的だったのではないかと思うようになった。