この方の短編集はこの作品以外に読んでいるけど、う~ん、この人、上手いね。何が上手いのかと言うと、“絵”じゃなくて、“話”が上手いんだよ。明るくてメルヘンな話で勝負ができれば、「うわぁっ、これはきついなぁ…」って思わせるほどダークで重々しい話でも勝負ができる。で、この短編集。話のほとんどに明るさが無いね。どちらかと言えばダークで重々しい。殺人や暴力、イジメ、家庭崩壊、を扱った話が収録されていて、話の題名は忘れたけど、オヤジとオフクロが夫婦喧嘩ばかりしている家庭の娘の話は(娘が)気の毒だったね。たとえ夫婦の仲が悪いとは言え、「子供さえいなければお前などといつでも離婚できるんだぁ!」というセリフ、酷い! こりゃあ娘が手前の両親を心底嫌うのは無理のない話だよ。この話の両親は酷いけど、“風の墓標”の登場するアルビンのオバと飯使いのジャイルズは“酷い”を通り越してガチでクズ。両者ともガチでクズだけど、オバは正真正銘のガチクズ。いやぁ~、この方の短編集は何だかガチでクズなキャラが登場することが多いんだよなぁ。とはいえ、読み手に対して「うわっ、何なの、こいつ?!」って思わせるほど胸糞が悪いガチでクズなキャラを描ける作者というのも中々凄いね。仮の話だけど、“風の墓標”に『ゴキブリ刑事』の鳴神が登場していたら、アルビンの“クズ”オバとジャイルズは亡き者にされていただろうね…(笑)。