意図した舞台は時間的にも、空間的にも果てしない。比べるならば、光瀬龍&萩尾望都[百億の昼と千億の夜]にも匹敵するスケールで物語を描こうとしている。…これが作者が経験を積み、もっと慎重に練り上げた末の作品だったらどんなに良かっただろう。時代の流行りにも、発表媒体にも恵まれないまま、才能だけでこれを描きあげてしまった作者は、自分が心血を注いだこの作品をどう思っていたのだろうか…。例えば核となるはずの7人さえ分かり難いなど、物語に沿って表現を組み立てる技術の未熟は明か。故に過去の名作として顧みられる可能性は今後も無きに等しいものと判断せざるを得ない。それでも絵的な迫力や、全体を貫く構想にはさすが見るべきものが有り、「若き日の作者の夢を一読者として愛しみたい」、どうしてもそんな気持ちに駆られながら読まざるを得なかった。