ピカレスク・ロマンとして文句なく面白い。▼
『鉄火場のシン』の柏木を知らないのだが,本作を読む限り,柏木の強さの源は麻雀に対する純粋さではないだろうか。この作品で柏木に負ける人々は,自己陶酔, 金, プライドなどの雑念に惑わされていて,麻雀に純粋に向き合っていない。だから最後は自分自身の雑念に呑まれて(麻雀の化身としての)柏木に敗れる。その雑念を称して柏木は「透けてる」と言っているのではないだろうか。そして柏木に敗れても何かを得た少数の登場人物は,麻雀以外の部分に貫くべき自分を見出したのだと思う。