無愛想で偏屈な祖父・逸樹と同居する逸実が、少年探偵団の仲間と共に周囲で起きるトラブルを解決していくライトミステリー。
雑誌掲載時から愛読してたが、一気読みして面白さに感動。本当名作。
逸実と友達の言動が大人びていて、小学五年生って年齢設定に無理があるとか(「インセストタブー」なんて言葉が日常会話ですらっと出てくる小学生って……)細かい違和感はさておき、取り上げられる事件のバリエイションの豊かさと、それに対する登場人物のアプローチ、鋭い洞察やなんともいえない余韻には唸らされる。
模試の盗難や準備室の怪現象、プールの水位が勝手に下がるなど、小学校という場所に焦点を絞った小さい事件があれば、アレルギーやウサギの殺害ほか、昨今の社会問題も盛り込まれて非常にリーダビリティが高い。一巻は99年発行らしいが、今から20年前の漫画なんて信じられない……全然古びてない。
特に心揺さぶられたのは2巻、逸実の同級生の自殺を巡る謎。
導入も物凄く上手く、何故彼女が逸実を意識するようになったのか、ストーリーが進んで実像が炙りだされるほど「ああ……」と何もできなかったやるせなさが募る。
毎日続いてるといつのまにか慣れて
自分の一部になっちゃって
それ無しだとどうしていいかわからなくなってしまう
逃げだせないのは躾と思っているからじゃなくて
気持ちも体も無理矢理辛い事に慣らされてしまっただけだ
作中の逸実の言葉が、ずしんと響く……。
この文章に出会えただけで、この漫画を読めてよかった。
全巻通して完成度が高く、崇高な善も醜悪な悪も、人間性の両面をきちんと掘り下げてエンターテイメントに仕上げている。
逸実と逸樹の稀なスキンシップが妙にフェティッシュ(口に指咥えさせたり)なのが気になったが、作者はBL系の人なのだろうか?
その手の描写に抵抗を感じる読者もいるだろうが、回数自体は少ないし、一風変わった読み応えの素晴らしいミステリーを探してるならぜひおすすめしたい。後半の古書のエピソードなど、作者の教養にも圧倒される。
ジャンルで分類すれば日常の謎系だが、毎回人が死んだり殺されずとも、アイディアと構成にこだわりぬけばコレだけ面白いものが書けるんだと目を開かされる思い。
願わくば続きを読みたいのだが、さすがにもう無理かな……。