簡単に言えば息子の母親介護エッセイですが、ひさうちみちおならではの視点が面白い。1話目で性的妄想を入れつつ自身の健康状態を、2話目から母親の妄想、人の判断基準、夫への恨みつらみの暴言で、齢五十越えの息子は母親の人生を振り返る。自分に降りかかればそりゃ大変なことだけれど、ひさうちみちおが語ると京都弁も相まって所謂「オカンネタ」に聞こえてくる。拝み屋と安倍晴明のくだりなんて、もーシュールすぎて。女性目線とはまた違う息子の心情とともに、淡々とグロテスクな描写も見せるので気持ち悪く感じる方もいるでしょう。美麗な絵も描ける作者ですが、この作品では生々しい絵と消しゴム判子のような絵で、夢の世界は見せてくれませんが〝ある母と息子〟のリアルは見せてくれます。