「おぼろ」という名の女忍(あるいはくノ一)を主役とする短編集。ただし各作品のおぼろは(おそらく)別人である。忍びの名はidentityではなくpseudonym(仮初めの符号)に過ぎないので,おぼろという名の忍者が複数いても問題ないのだろう。▼同じ小島剛夕さんに同じテーマを描いた『くノ一百鬼』があるが,個人的にはこちらの『おぼろ十忍帖』の方が遥かに良いと感じた。理由は自分でもよくわからない。ただ『くノ一〜』では忍術に比重が置かれているように見える一方で,『おぼろ〜』は忍者の心の動きにフォーカスを絞っていることが良い効果を生んでいるのかもしれない。