良作。田中角栄は夢を現に出来る希代の宰相だったと思います。言葉で民衆に希望を持たせられる政治家は、田中角栄以後、登場していません。
ただ、現在の日本を思うと、全てを手放しに称賛はしにくいです。田中角栄の最大の失態は、ロッキード事件など汚職ではなく、自分と同じ熱量を持つ後継者の育成が追い付かなかったことでしょう。
また、日中国交正常化に際し、台湾を切り捨てたことも、多くの人の恨みを買ったと思います。台湾は元日本領です。もしかすると、元日本領だからこそ、台湾に苦労を強いたのかも知れません。しかし、身内に我慢をさせるやり方は、長続きすることはありません。不満の火種はくすぶり続けます。その火種が弾けたのが、ロッキード事件での失脚ではないかと感じました。
作品の造りは、ドラマチックなものではありません。エピソード集を漫画化したという印象です。ストーリー性のある田中角栄をモチーフにした作品なら『柳都物語』がお勧めです。