奇想が詰まった短編集。
どれも「どうやったらこんな話思いつくの?」という意外性に溢れていてセンスオブワンダーが光るアイディアに唸らされる。
自分の指から生まれた妹に恋する少年とか虫の弟とか聞くと「?」「??」なんですが、読んでるうちにその優しくあたたかく少し哀しい世界観に引き込まれる。
設定は突飛だけど作中で描かれるのは人と人に似て非なる異形の触れ合い、魂の交流。友情だったり恋愛だったり家族愛だったり形は様々だけど、どの話でも重要なキーとなるのは誰かを慕い愛する人の想い。
特に印象に残ったのは表題作「虫と歌」。
虫から変異した弟がある日突然やってきて家族の仲間入りをするが……
ほろ苦く哀しい読後感。
最後の場面、机に突っ伏して苦悩する長兄の姿にどれほど胸を打たれたことか。
四季の移り変わりを切り取った場面が静かで美しく描写が淡々してるだけに、余命を知った上での選択が胸に迫りました。