大江戸八百八町を舞台に、春画の名手と誉れ高いも本命の風物画のほうは鳴かず飛ばずなヘタレ絵師・鳳仙と、捜し物の依頼を受けて仕事をする「当て屋」の椿がコンビを組んで活躍するミステリー。
まず華やかな絵柄に惹かれました。女性キャラは文句なくエロ可愛く体つきもコケティッシュかつフェティッシュ、大暮維人を思い出す。
椿は美人だが男勝りでさばさばした性格、対する鳳仙は気弱なところはあるが心優しく生真面目。そんな正反対の二人が様々な依頼を受け、江戸で起こる猟奇的な事件に関わっていくシリーズなのですが、ロジック重視のトリックよりはドロドロした人間の心理や愛憎が生んだ悲劇に焦点をあてている印象。
椿自身よろずの因果を紐解いて謎を当てるのを主眼とする「当て屋」を名乗っているだけに、「なにをどうやって」より「誰がどうして」という動機の方に興味をひかれている節があり。
一巻収録の「耳」と「狛犬」はオチが同じで少しがっかりしましたが(どう同じかは読めばわかる)二巻以降からどんどん面白くなってくる。
濡れ場も多くグロい表現もありますが、椿の快活さや彼女が支えとする吉原の遊女・篝の無垢さ、鳳仙とのコミカルな掛け合いに救われている。
江戸時代ならではの風俗や迷信などが事件の大元のキーとなってる場合もあるので、そちら方面に興味がある人にもオススメ。