スキマ

『黒でなく、白でない。』のレビュー

ユニさんの別の作品のレビューにも書いたが,吉岡先生は裏表はないが本心がどこにあるのかわからない。それはもしかすると吉岡先生本人にもわかっていないのかもしれず,だから「約束はできない」のかもしれない。▼アンジュルムの『46億年LOVE』という曲に「一生守るとすぐに誓うけど あなたの一生って何度目?」という歌詞がある。「一生誰か一人だけを愛し続ける」という言葉がいかに空虚なものであるかを,吉岡先生はよくわかっているからこそ,今この一瞬に一番好きな相手をそういう嘘(たとえそれが優しい嘘であっても)で騙すことができないのだと思う。そういう意味では彼女はすごく誠実なのだろう。▼だがそれは相手を突き放す誠実さでもある。「一途な愛は(大抵の場合)虚構である」という真理を受け入れるにはある種の剛毅さが必要だが,多くの人はそこまで強くはない。松野先生が,吉岡先生から見ても読者から見ても愛おしいのは,そうした普通の人の「弱さ」を体現しているからだと思う。▼ただ,もし松野先生が他の人を好きになった場合,吉岡先生がどうなるのかはちょっと見てみたい気もする。『おねえさんに食べられたい』の最初の一編「女の子に弱い女の子」に出てきたみっちゃんのように,偶然人混みで前の彼女がカップルで歩いているのにバッタリ会った後で泣いたりしないのだろうか?
2021年4月1日
作品より作者の方が面白そうな終わり方
ネタバレを含みます
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2019年8月9日
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