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『王国の子』のレビュー

国のモデルはイギリス。 登場人物の名前もそのままです。 病弱な弟の保護と引き換えに王女の影武者となった元芝居小屋の少年・ロバート。 勝気で皮肉屋、口が減らない彼と、幼くも聡明な王女エリザベスの出会いから始まる華麗なる宮廷絵巻。 びっけさんの著作は何冊か読んでますが、正直これが一番面白かった。導入から物語が確立されている。掴みはばっちり。イギリス史を下敷きにしているだけにそっち方面に造詣が深い方には胸躍るエピソードやキャラが続々出てくる。 王女の影武者として採用されたロバートの人物造形も魅力的。 芝居小屋育ち故に学はないのですが素晴らしく機転が利く。影武者と王女とはいえ、エリザベスとの関係は運命を共にする対等な戦友に近い。親切心から彼女に弟宛の手紙を書けと薦められた時の啖呵の切り返しは実に痛快でお見事。 「だが、俺の弟は字が読めないんだぞ?」 それを受けたエリザベスもいじけるでなく、見聞を広めようと教えを乞うなど、現状に甘んじぬ向上心と謙虚さに好感がもてる。 一巻の時点で既に不穏な要素盛りだくさん、人間関係は錯綜している。 裏切り、陰謀、駆け引き…… 王族を利用し出世を企む腹黒い貴族たち、影武者とはある意味その最強の対抗手段にして最大の切り札。 題材が題材なのでシリアスな場面も多いですが、エリザベスとロバート、その側近との語らいなど、ホッと一息つけるシーンが巧みに挿入され、重く暗くシリアスに傾きがちなお話の緩急に一役買っている。 びっけさんの絵柄はすっきりと綺麗で見やすい。13歳の少年が女装して影武者に……というネタだけクローズアップするとその手のイロモノにとられてしまいがちですが、影武者に男を採用する有利性と必然性が序盤に説かれるので、そこには引っかかることなくストーリーに集中できました。
2020年5月6日
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